親族内承継における種類株式を活用した「経営権の集中」| 東京の事業承継M&A会社:東京・横浜・千葉・埼玉・大阪を中心に活動/事業承継/企業再編/M&A/合併/企業買収/分割/会社清算/相続/贈与
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親族内承継における種類株式を活用した「経営権の集中」
・種類株式を活用し、後継者と後継者以外に差を設けることが可能
・登記不要な「属人的株式」の活用も有効手段
【中小企業の事業承継に利用できる種類株式の例】
剰余金配当優先株式 |
他の種類株式に比して有利な条件で配当を受ける権利がある株式
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議決権制限株式 |
株主総会の全部又は一部について議決権を行使できない株式
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取得条項付株式 |
発行会社が一定事由を条件にその株式を取得できる株式
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拒否権付株式 |
株主総会又は取締役会において決議すべき事項を拒否権付種類株主総会において拒否権により承認しないことが出来る株式
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【黄金株の活用】
現経営者[父] 株式100株保有(100%)
↓ ※株価が低い時に普通株式99株を贈与※
現経営者[父] 株式1株保有 ≪黄金株≫
後継者[長男] 株式99株保有
■Point!!■ 贈与前に現経営者の株式1株を≪黄金株≫にすることによってその影響を残す!
種類株式を"活用する" ⇒ ≪得≫
種類株式を"活用しない" ⇒ ≪損≫
種類株式を活用して、後継者に経営権を集中させる
会社法創設により多数の種類株式が発行できるようになり、事業承継において経営権の分散リスクを防止するための有効な手段となっていることをご存じでしょうか?
種類株式とは、定款によってその種類ごとに異なる内容を定めた株式のことで、種類株式の内容について登記が必要です。なお、種類株式の導入については、株主総会の特別決議による定款変更が必要です。
同族オーナー企業が多い中小企業においては、後継者に経営権を集中させることが重要です。しかし、相続財産のほとんどが自社株というような場合、他の相続人から遺留分を主張される可能性があります。この場合、例えば、後継者である息子には普通株式を、後継者以外の相続人である嫁いだ長女には議決権を持たない無議決権株式(議決権制限株式)とし、さらに剰余金配当優先株式に組み合わせることで長女の納得を得やすくなります。
また、拒否権付株式(いわゆる黄金株)を活用することにより、株主総会または取締役会において決議された事項を拒否権付種類株主総会により拒否権を行使して承認しないこともできます。例えば、経営者である父が所有する自社株100株(100%)のうち1株だけ黄金株として、重要事項の決定について拒否権を持たせておきます。そして、自社株評価が低いうちに黄金株を残して、後継者である息子に普通株式99株を贈与したとします。この場合、息子が誤った方向に進みそうになったときだけ、拒否権を使ってストップをかけることができます。
種類株式は組み合わせによりたくさんの可能性を持っています。種類株式を活用して、後継者と他の相続人との間で「争族」とならないようにしたいものです。
登記不要なため第三者に知られない「属人的株式」の活用
中小企業の定款を見ると、「株式の譲渡制限事項」をうたい、登記簿謄本には「株式譲渡制限に関する規定」が記載されているケースがほとんどです。
この譲渡制限会社においては、種類株式を発行しなくても、次の3つの権利について「株主ごとに異なる取扱い」を定款で定めることができます。なお「株主ごとに異なる取扱い」は、種類株式とは異なり登記されないため、第三者に知られることはありません。ただし、その導入には、株主総会の特別決議より重く、特殊決議が必要です。
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このほか、定款に「相続人に対する売渡請求」を定めておくと、自社株が相続等により移転した場合、会社は自社株の新たな所有者に対し、会社へ売り渡すように請求することができます。
2018.8.1執筆
(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。
今村 仁
「節税は義務、納税は権利」がモットーです。
自分の半生について、取材を受けました。